コラム

米国シリコンバレーをはじめ、グローバルで人材ビジネスを展開するパソナグループ。今回はパソナグループの北米法人に勤務し、日米をつなぐ仕事をしている幸村友美氏にインタビュー。

留学生が就活をする際に気をつけるべき点、成功させるポイントについて、人材のプロの視点で語ってもらった。

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Pasona N A, Inc. (米国パソナ)
国際事業開発部 アソシエイトディレクター
幸村 友美 氏

大学卒業後、1999年より人材派遣会社にて営業及びリクルーターとして勤務。米国に留学後、米国の出版社、日系の商社を経て、2009年にPasona N A, Inc.に入社。現在、国際事業開発部の責任者を務める。

30年以上、グローバルで日本企業をサポート

−まず御社の概要を紹介してもらえますか。

Pasona N A(パソナノースアメリカ)は、総合人材会社パソナグループのアメリカ法人です。いま社員数は約100名で、全米10拠点で活動しています。

私たちは、主に日系企業向けに人材紹介、人材派遣を行っています。また、企業の経理や人事等の管理部門のアウトソーシングサービスを提供しています。

私たちは30年以上、海外事業を展開してきた実績とネットワークがあります。最近では、アメリカの求職者にシンガポールの求人案件をご紹介するなど、クロスボーダーなサポートもしています。

就活がうまくいく留学生、そうでない留学生

−幸村さん自身は、アメリカにいるとき、留学生からキャリアの相談を受ける機会がありますか。

そうですね。就職活動をする方に履歴書の書き方をアドバイスしたり、模擬面接の面接官を務めることもあります。

あとは日本人ネットワークが強いエリアですので、気軽に将来のキャリアについて相談を受けたりしますね。

−就活がうまくいく留学生、そうでない留学生の違いはありますか。

アメリカで視野を広げる活動をしている留学生は納得のいく就職活動ができている印象を受けます。せっかくアメリカに来たのだから、アメリカでしかできないことをしよう、そういう姿勢で積極的に活動をしています。インターンシップ、ボランティア、あるいは様々な方とイベントやプロジェクトを企画するなど、アクティブに活動されています。失敗もするかもしれないけど、色々とチャレンジすることで自主性やコミュニケーション力を磨いている人は充実した就職活動の日々を送っています。

逆に失敗するのは、アメリカに来ることが目的になってしまっている留学生です。せっかくアメリカに来たのに学校に行き、友達を作り、それで終わってしまっている方は就職活動に苦労していると感じます。

アメリカに来たからこそ成し得たエピソード、失敗したエピソード、こういったものを持っていると非常にいいと思いますね。

−入社する企業はどういう視点で選ぶべきでしょうか。

自分ができることと、自分が興味あること、この2つを考えてみるといいと思います。

自分のスキル、自分の勉強してきたことを活かす仕事に就きたいと思っているかもしれません。自分が興味のあることというのは、ゲームやスポーツ、コンサルティングといった業界や職種でもいいと思いますし、自分は人を喜ばせることが好きとか、データを扱ったり、計算がピタッと合ったときに達成感を感じるなど、個人が喜びを感じるポイントはいろいろあると思います。

その「できること」と「興味のあること」の二つが実現できる業界、仕事を探してみてはいかがでしょうか。

−ベンチャーに行くべきか大企業に行くべきかというテーマについてはどうでしょうか。

それぞれの利点があり、個人によっても違うので正解はないと思います。

昔のように終身雇用が主流で大企業だから安心という時代は変わりつつあります。これからは1人が2つも3つも職業を持つ時代になるかもしれません。自分の才能を活かしながら、自分の生活にあった働き方が実現できる会社が大事だと思います。
 
私も今の仕事にいたるまでに様々な業界、職種でキャリアを積んでいますが全て非常に役立っています。

どんな経験も自分の資産になると思って、前向きにキャリアを作っていくことが大事だと思います。

日本企業が留学生に求めること、懸念していること

−日本企業が留学生に求めているものは何でしょうか。

ソフトスキル面が大きいと思います。たとえば、留学を通じて、言葉も通じない環境でチャレンジしてきたという主体性。そして異文化の中で人と関係をつくる国際感覚。このようなチャレンジ精神や多様な価値観に期待している会社が多いと思います。

−一方で日本企業が留学生について懸念している部分は何ですか。

海外志向が強くなりすぎて、日本のチームへの順応性が欠けてしまうことを懸念する企業はあるかもしれません。

ただ、異文化の中で培ってきたコミュニケーション能力をアピールすることで企業の懸念は払拭できます。さまざまな文化、生活習慣が違う人たちと、どのようなコミュニケーションを図ってきたかを伝えるのが良いと思います。 −なるほど。そのあたりは気をつけた方がいいですね。

よく「私は日本人の友達がいませんでした」という話をする人がいます。これは語学力を鍛えるために、あえて日本人の友達を作らなかったということだと思うのですが、これから日本人とも一緒に働くわけですから、相手に誤解されないよう、しっかりと自分の多様性、柔軟性も伝えた方が心象はいいと思います。

ビジネスマナーは身につけておくべき

−ビジネスマナーについてはどうでしょうか。留学生は疎い人が多いと思いますが。

ビジネスマナーの基本は身に付けましょう。社会人として相手に信頼感や安心感を与えるビジネスマナーは大事です。日本の会社で働くのであれば、日本の商習慣やマナーを身に付けることで仕事もスムースに進みます。

相手の文化や商習慣を尊重して、その上で自分の個性を出す。これはいいと思いますが、まずは基本を知ることが第一歩です。例えば身だしなみも重要な第一印象です。たまにとてもカジュアルな格好で面談にいらっしゃる方がいます。

−どんな格好で来るのですか。

ジャージとかですね(笑)。もしスーツを持っていなかったとしても、「今日は学校帰りなので私服でも大丈夫でしょうか」と一本連絡を入れてもらえれば印象が変わります。

−シリコンバレーだと、スーツを着ている人はいないイメージがありますが、それでもきちんとした格好の方が良いのでしょうか。

シリコンバレーは、比較的カジュアルですが、それでもやはり就職活動のときは少なくともジャケットは皆さん着用されます。

採用イベントは自分を知り、仕事を知る絶好の機会

−海外にいながら日本企業に就職しようとすると、物理的な距離があるので、大変なことも多いと思います。

そうですね。よって、アメリカで開催されている就職イベントに参加したり、直接企業に問い合わせしたり、日本の人材紹介会社に仲介してもらうなど、自ら積極的にアプローチすることをお薦めします。
 
今回のITCEのようなイベントは貴重な機会なので、参加して日本企業の方々のお話を聞いてみるのは非常に良いと思います。

−最後に、ITCEに参加する留学生にメッセージをお願いします。

まずは自分ができること、やりたいことをよく考えてほしいと思います。そして社会人の先輩やご両親など、自分の人生の先輩から意見をもらってみてください。その上で企業リサーチをしていくと、おそらく自分に合いそうな会社や、自分が行きたいと思う会社がきっと見つかると思います。ぜひ焦らずに、まずは自分を知ることから始めてみてください。

さまざまな業界がある中で、IT業界というのは、身近に感じない人もいるかもしれません。自分が知らない業界について学んだり、社会にどんな貢献をしているのかを知ることは、自分のキャリアの視野を広げる上で役立ちます。IT業界に限らず、まずはいろいろな社会人と話をして、キャリアに対する具体的なイメージをつくっていってほしいです。

今回せっかく日本の会社がアメリカに来て、留学生を採用したいと思ってくれているので、ぜひITCEに参加してみて、その会社が何をやっているのか、留学生に何を期待しているのかというのを知っていただきたいと思います。

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