コラム

若手人材の眠った才能をどう引き出すか?という観点で人材開発・採用支援をおこなっているラーニングエンタテイメント社。今回は多くの大学や合同企業説明会イベントなどで1500回以上の就職活動に関する講演実績があり、「奇跡の就活術(KADOKAWA)」等の著書もある、同社の代表取締役でもある阿部氏に、「面接のコツ」について聞いた。


株式会社ラーニングエンタテイメント
代表取締役 阿部 淳一郎 氏

社会人教育をおこなう東証一部上場企業、学校法人を経て、2004年に起業。採用コンサルタントとして20社以上の新卒採用に関わる一方、大学での就職支援にも力を入れ、これまで、3万人以上の学生たちと向き合い、大手商社、大手銀行、大手メーカー、メガベンチャーなど著名企業の内定者を多数輩出。その一方、207社連続で落ちて相談に訪れた女子学生が、複数の企業から内々定を獲得した例など、就活が上手くいかない人の眠った能力を引き出す支援にも注力している。2014年からは、アメリカ(サンフランシスコ・シリコンバレー)にも事業展開中。早稲田大学教育学部卒、筑波大学大学院(行動科学/ストレスマネジメント領域)修了。保健学修士。

面接対策のコツは何でしょうか?

面接対策のポイントをシンプルにいうなら「「ズレ」がないようにすること」。面接は、いわば自分の価値を相手(企業)に伝えるプレゼンの場。プレゼンの基本は「相手の知りたいこと」を「相手に伝わるように伝えること」です。

だから面接の準備は、「相手(=面接官)の知りたいことは何か?」を明確に理解することからはじめる必要があります。

しかし、がんばっても結果が出ない人は、このプロセスを飛ばしてしまい、相手(=面接官)が知りたいこととズレたことを伝えている場合が非常に多い傾向にあります。

私が採用コンサルタントとして、某企業の面接でNGを出した例を挙げましょう。

「Aというミュージシャンのことが誰よりも好きです」と自分が如何にAというミュージシャンが好きで、そのAさんの音楽が素晴らしいかーを「自己PR」として熱く語った人がいました。

そのミュージシャンが好きであることは、個人の趣味として自由です。ただ、「面接官が知りたいこと(=面接という場で、相手に自己PRとして語ってほしいこと)」ではありませんね。

「面接官が知りたいこと」とは、どんなことでしょう?

採用担当者が「見たいところ・知りたいところ」のポイントは2つだけです。

1:活躍できる能力が有りそうか・否か
2:会社(チーム)に馴染みそうか・否か

両方に○がつけば、通過しますし、1つ以上に×がつけば不通過にします。ここで知っておいて頂きたいことがあります。

面接官が不通過という結論を出す一番多い理由は「わからない(判断ができない)」というもの。

先に例として挙げたAというアーチストのことを語った人は極端な例ですが、多くの人が、面接官の知りたいことと「ズレた」内容を面接で伝えているのが現状です。だから、面接官は〇か×かを判断できないのです。私の体感値では8割くらいはこの理由でNGを出されています。

しかし、これを言い換えれば、この「ズレ」を修正すれば、グッと通過率は上がるということになりますね!

具体的に「活躍できる能力がありそうか・否か」を、伝えるためのポイントは?

「活躍できる能力」は、「SHS+αの法則」というルールに沿って整理すると効果的です。この法則は、仕事で高いパフォーマンスを出す人たちが持つ能力の頭文字をまとめたもの。

♦「S」pecial Skill=業界・職種で求められる特定の技術や知識

プログラマーならプログラミングスキル、料理人なら食材の知識や調理スキルというもの。

♦「H」uman Skill=どの仕事でも必要とされる人間力

コミュニケーション、段取り、ストレス耐性など社会人基礎力にあたるもの。

♦「S」tance=価値観

「(自分が)好きなこと」と「(他人に)してあげて嬉しいこと」の両方。わかりやすく料理人の採用をあなたがするとしましょう。

「食材の知識や料理の技術(Special Skill)」を高いレベルで持ち、コミュニケーションや段取りが上手く、また、ストレス耐性も高い(Human Skill)。そして何よりも料理を作るのが好きで、それを食べた人に喜んでもらうことも好き(Stance)」という3つが揃った人だと面接で判断できれば、高いパフォーマンスを期待できませんか?

企業が採用活動をする際は、この3点を見たいのです。

これらは能力や価値観は過去の行動の蓄積で身についたものです。

だから、自分のこれまでを振り返り、「◎◎という経験を通じて、××という能力を身に着けてきたなー」とか、「▼▼という経験が、△△という価値観を身につけるキッカケになったなー」といった自分情報を整理した上で、文面に落とし込んでいくのです。

「SHS」には資格や語学力のことが入っていませんが、どういう扱いになりますか?

語学や資格は(医師免許や弁護士資格などその資格がないとその仕事につけない場合を除いては)、+α つまり、鬼に金棒でいう「金棒」にあたるものだということを理解してください。

例えば「他人と良い関係を築けず、仕事も段取りが悪く、ストレス耐性も低い。ただし、TOEICは高得点をもっている」という人では、仕事で高いパフォーマンスを出すことはできないでしょう。

しかし、「他人と良い関係を築け、仕事も段取りもよく、ストレス耐性も高い。更に、TOEICは高得点をもっている」なら+α、つまり、鬼に金棒になりますね。

資格や語学力は、SHSがベースにあってはじめて、仕事では活きるものなのです。

例えば「エンジニア(未経験可)」といった募集は、本当に未経験でも通過できますか?

結論としては「YES」です。

日本における若手(学生・第二新卒)の就職活動においては、「エンジニア募集(未経験可)」というのをよく見るかと思います。これは「Special Skillは選考段階では問いませんよ。これから社内で教育しますから大丈夫ですよ。Human Skill、Stance だけで判断しますよ。」という意味です。

これは新卒募集でよく見る「総合職募集(全学部・全学科)」も同じです。入社後に身につけてもらいますから、その業務の専門知識(Special Skill)は問いませんと。

反対に「技術職募集(◎◎言語使用)」とかキャリアのある方(=年齢が上の中途採用)、海外への就職などは、「Special Skill」「Human Skill」「Stance」の3点を全て見られます。

だから、この募集の場合は、未経験(もしくは新卒なら大学の専門で研究していない等)の人が応募しても、通過するのは厳しいのが現実だと思います。

会社(チーム)に馴染みそうか・否かは、どう判断するのですか?

とてもアナログですが、面接官の「感覚」だと思ってください。

一部の先進的な心理アセスメントツールなどを入れている企業もありますが、大半の企業は、最終的には、面接官の感覚(ウチは体育会系気質だけど、彼・彼女は合わなそうだなーなど)や好き・嫌いで決まる場合が殆どなのが実態です。

面接は、資格試験のように「○点以上が合格」といったデジタルな世界ではありません。どれほど能力が高くとも「相性が悪い」という理由でNGになることが多々あるのが実態の、とてもアナログな世界です。

だから、能力がクリアしているにも関わらず、感覚がフィットせずに落ちたのなら、「ご縁がなかった」と考えるしかありません。

性格を偽ることも不要です。無理に相手に合わせずありのままでOKです。それでNGなら仕方ない。とてもベタですが「割り切ること」も就職活動では必要です。

面接本番で上手くいくコツはありますか?

勘違いしないでいただきたいのは、面接は「マナーをどれくらいきっちり・かっちり実践できたか選手権」「元気に大きな声で挨拶ができたか大会」「暗記してきた心にもない相手を褒めちぎった文言をどれくらいスラスラいえたかコンテスト」の場ではありません。

「面接」を英訳すると「インタビュー」。スポーツ選手のインタビューシーンを見たことがあると思いますが、インタビュアーと選手とで「対話」をしていますよね?アレをする場だと考えてください。

ですから、大人と、どうしたら対話がスムーズに進行するか?という視点が大切です。

面接の場で、面接官はどんなところを見ているのでしょう?

もしあなたが、面接官だとしましょう。入ってきた応募者が、「寝ぐせがついている」「スーツがよれよれ」「挨拶すらもできない」「態度が横柄」という第一印象だとしたら、どう思うでしょう。もうこの段階で、どんな人なのか経歴や能力を聞く以前の問題として、後輩として入社して欲しいとは思わないのではないでしょうか?

とはいえキャビンアテンダント職の面接など一部を除き、99%の面接では、ハイレベルなマナーの所作は必要ありません。

ただし、相手への敬意を欠くような態度や服装では、その段階で、せっかく素晴らしい能力をもっていたとしても、NGにされてしまう確率が高くなります。

だから、社会人ルールとして、相手への敬意を表す服装や一般常識レベルのマナーについては、学んでおきましょう。WEBや本、セミナーなどで学ぶ場所はたくさんあります。

第一印象をクリアすると、次に第二印象として、中身について掘り下げる段階に入ります。

では、どんなことを聞かれるのか?というと、9割が「SHS+αの法則」の部分です。つまり、どんな「業界・職種で求められる特定の技術や知識」「どんなコミュニケーション、段取り、ストレス耐性などの社会人基礎力」「(自分が)好きなこと」「(他人に)してあげて嬉しいこと」をこれまでの経験で身につけてきたのか―を対話の中で面接官はイメージしていくのです。

だから、「対策」として何をするのが効果的か?というと、エントリーシートを書くプロセスを通じて、しっかりとSHSを整理すること。これが最大の面接対策になりますね。

何かコツはありますか?

2つあります。

1つ目は、「TAKER」ではなく「GIVER」の視点に立つこと。

大学生までは、お金を払って、学校に学びにいくわけです。つまり価値を受ける(TAKER)側ですね。しかし、社会人になるとお金の向きが変わり、お金をもらって、価値を提供する側(GIVER)になるわけです。

しかし、このTAKERからGIVERへ変わるということを認識しない人が非常に多くいます。例えば、面接の場で「事務の仕事」「給与が◎◎円以上」「土曜・日曜休み」を希望しているので、御社を志望しました。以上!というようなことをドヤ顔で伝えてくる人がいます。

これを翻訳すると「お金をください。そして、私の求めるものは「事務の仕事」「給与が◎◎円以上」「土曜・日曜休み」の3つです。」と伝えていることになりませんか?

企業は「アナタの求める条件に当社はあっているか否かを教えてください」などということを知りたいわけではありません。

「「人」のために「動」く」と書いて「働」という漢字になります。

必ず、誰かの役に立っていて、その対価としてお金を頂くわけです。だから、「自分は、誰かの役にたつ、こんな能力があり、こんな形で御社に活かせます。」「自分は、こんな形で、誰かの役にたちたいと考えていて、その価値観に、御社が、こういう理由でフィットした」という切り口で伝えるようにしましょう。

2つ目は、「何をしたか」ではなく「どうしたか」の視点で伝えること。

例をあげましょう。あなたが面接官だとして、この内容を伝えられたとしましょう。

私はインカレのテニスサークルに所属していました。メンバーはだいたい50名でした。テニスを週に3回程やるサークルでした。合宿は年に2回、春と夏にありました。場所は春は山中湖で、夏は長野です。

人数が多いのでバスでいきます。その中で私は、コート係でした。公共の施設を使うので、抽選です。これを月の頭に並んでコートを押さえます。・・・

「活躍できる「能力」が有りそうか・否か」が判断できるでしょうか?

私なら判断できません。この情報からわかることは、サークルの概要のみ。「こういった活動をしているサークルに所属していた」という「何をしたか情報」だけを伝えられたところで、この方の「能力」は判断しようがありません。

では、同じサークルの話でも、これならば、どうでしょう?

所属していたインカレのテニスサークルでのこと。所属大学ごとのメンバー対立がおき、退部者が数名出るほどの時期がありました。私はもっと仲間同士で尊重しあう雰囲気を望んでいたため、なんとかこの状況を打破しようと試みました。

まずは口に出せない不満を聞きだそうと、7人のメンバーをお茶に誘うと「自分たちがあまりサークル内で大切にされていないと感じている」という不満を持っていることに気付きました。そこで、例えばLINEグループを作り、飲み会の連絡は、そのグループに一斉に流し平等感を出すといったことなど、不満を解決する方法を複数考え、実行していきました。

結果、雰囲気は改善され、退部者もゼロになり、参加率も20%ほど上がりました。そして、信頼が得られたのか、結果として、以後の幹部決め会議では女性のトップである副幹事長に全員一致で推薦されました。

この例のように「どうしたか情報」を伝えてくれれば、面接官は「人間関係を調整する能力」とか「他人を気遣う能力」等の高さが判断できませんか?

これならば「活躍できる「能力」が有りそうか・否か」が判断できますね。

よく「すごい経験や能力がある人」しか通過しないという思い込みをしている人がいます。

ただ、第二新卒や新卒の面接に於いては「人間関係を調整する能力」とか「他人を気遣う能力」といったHuman Skill を重視する企業の方が多いんです。

誰しも、必ず長所がありますよね?飲み会の席などで「あなたの良いところは◎◎というところ」ということを言われたことがあるはずです。これがHuman Skillです。

これが発揮できたエピソードを具体的に語れば、通過率はものすごく上がりますよ。

最後に就職・転職活動をしている人達へのメッセージを頂けますか。

大切なのは「出会い」だと僕は思っています。たまたま出会った人との会話から「こんな仕事があるんだ」という発見があったり、「キミはこんな良いところがあるよね」なんてフィードバックをされたことから、新たな側面が見つかったり・・・

この積み重ねで、視野が広がっていくと思うのです。面接の練習としても最適ですし。

例えば、SNSで探せば趣味のオフ会イベントがたくさんありますよね?例えば、ある人は、マラソンのイベントに勇気をもって初参加したところ、年齢・性別・職業など普段、あまり合う機会のない人と出会え、とても視野が広がったと言っていました。

だからこそ、Make Action!で街に出てみましょう!きっと何かが転がっているはずです。

◎株式会社ラーニングエンタテイメント:http://learning-et.jp/

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